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ラボ実験5:半減期測定

目的:

  1. 崩壊データから半減期を決定する方法を示します。
  2. バックグラウンド除去の重要性を示します。
  3. 中性子放射化による短寿命同位体の生成理論を学びます。

必要な機器:

理論の概要:

原子核の半減期

放射性物質の放射能とは、単位時間あたりに(粒子の放出によって)崩壊する原子核の数を意味します。放射性物質の放射能は、対象の物質の質量に依存し、崩壊によって原子核が別の状態に遷移するにつれて減少します。未崩壊原子核の数の変化ΔNは、未崩壊原子核の数Nと変化が起こる時間Δtに比例し、次式で表すことができます。

ここでは、λを特定の同位体および放出される粒子の種類に依存する原子核崩壊の定数とします。

無限小の時間の未崩壊原子核の数は、次式で表すことができます。

これを微積分を用いると次のように解くことができます。

ここでは、
N を時間tの未崩壊核種数、
N0 を時間t = 0の未崩壊核種数、
e を自然指数(約2.7138に等しい)とします。

サンプルの放射能Aは、核種数Nに比例するため、次式で表すことができます。

ここでは、Aoを時間t = 0におけるサンプルの初期放射能とします。サンプルの放射能は時間の関数として測定でき、崩壊定数は実験によって決定されます。

原子核測定において、半減期は有用なパラメーターです。半減期とは、放射能が元の半分に減少するまでにかかる時間を意味します。不明なサンプルの原子核の半減期を測定して、公表値と比較すればサンプルの同定に役立ちます。

時刻t = 0における初期放射能をAoとした場合、時刻t = τにおける放射能はA = ½Aoとなることから、原子核の半減期τは次式で表すことができます。

この方程式では、両辺の自然対数をとって簡略化すれば半減期の解が得られます。

または、

両辺の自然対数をとると次式が得られます。

または、

以下の図は、時間の関数として観測されたカウント数(バックグラウンド除去後)を測定した52V崩壊例を示しています。この図から、放射性崩壊が指数関数的な性質を有することがわかります。

図5-1:時間の関数としてのバックグラウンド除去をした52Vの計数値

中性子の放射化

方程式5-1は、崩壊(または放出される放射線)量が崩壊定数に比例することを表しています。方程式5-9は、これが半減期に反比例することを示しています。したがって、この実験では、授業という比較的短い時間内でも十分な崩壊データが得られるように、半減期が比較的短い核種を選ぶ必要があります。

短寿命の放射能を生成するのによく取られる方法に、252Cfやアメリシウム/ベリリウム複合線源のような中性子線源による天然金属(バナジウムなど)の放射化があります。

サンプルを放射化するには、バナジウム箔を中性子線源に近い(数センチメートル離れた)水槽内に設置します。線源から放出された中性子は水中でエネルギーを失います。中性子のエネルギーは、サンプルに到達するまでに周辺温度(室温水)と同じエネルギーまで減少することから「熱中性子」と呼ばれています。中性子のエネルギーが0.025eV以下で、バナジウムが中性子を吸収する断面積が4.9バーンであることから、高い確率で反応が起こることを示しています。

バナジウムは基本的に1つの同位体51V(天然バナジウムの99.75%)で構成されています。バナジウム箔は中性子を吸収して52Vを生成し、ベータ崩壊によって半減期の3.75分間で52Crに崩壊します。

この実験では、52Vの半減期を決定するために、52Vの崩壊とともに発生するガンマ線を測定します。

大型の中性子線源とバナジウム箔が入手できない場合は、137mBa小型ジェネレーターを購入して代用することも可能です。このジェネレーターは、137Csのベータ崩壊のために使用します(下記参照)。

親同位体137Csは、半減期の30.1年間でベータ崩壊し、準安定状態の137mBaに遷移します。これにガンマ線(662keV)を放出して、さらなる崩壊を起こさせ、137Baの安定同位体に遷移させます。ジェネレーターで137mBaは選択的に「ミルキング」され、親核種137Csが残ります。このジェネレーターは、放出された662keVガンマ線を測定することで、137mBaサンプルの半減期を測定できます。

実験5の手引き:

1. サンプル( 放射化されたバナジウム箔または137mBaサンプル)をNaI(Tl)検出器の表面から数センチメートルの位置に設置します。

2. 検出器に接続します。実験1の推奨事項に従ってMCAの設定を構成します。

3. [取得] タブを使用して、取得モードをMCSに設定します。[MCA] タブのMCS変換ゲインを256に設定します。

4. MCSの取得モードを滞留時間が20秒、掃引回数が1回、識別器モードが「高速弁別」になるように設定します。MCSの取得を開始し、ヒストグラムがチャネル60を取得しているとき(取得開始の20分後)に停止します。

5. データを保存してから消去します。

6. サンプルを取り出し、測定を繰り返してバックグラウンドデータを取得します。

7. サンプルとバックグラウンドデータをMicrosoft Excelや他の表計算アプリケーションにエクスポートして、データからバックグラウンドを除去します。

8. 方程式5-4を使用して崩壊定数(および不確かさ)を計算します。そのためには、tに対してln(A/A0 )をプロットし、勾配(と不確かさ)を決定する必要があります。

9. 方程式5-9を使用して、半減期(および不確実性)を計算します。計算結果を公表値と比較します。

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